Nimbus Day 19 (3/5)

「でも一つ、忠告しとく。いくらはき心地がいいからって、四六時中その靴に足を突っ込むのは、よくないと思うよ。」 「なぜですか?」 「あまりにも、お嬢さんの足に合いすぎてるからさ。外から見ただけでも、怖いくらいだ。ずれがなさすぎるんだよ。靴と足の境目が、ほとんど消えかかっているじゃないか。靴が足を侵し始めてる証拠だよ。」 「オカス?」 「ああそうだ。ごくまれに、そういうすごい靴があるんだよ。足を侵しちゃうような靴がね。俺も一度だけ、四十二年前にこれと同じタイプの靴を磨いたことがある。だから分かるんだ。悪いことは言わない。それをはくのは、一週間に一度くらいにするんだな。そうじゃなきゃお嬢さん、自分の足をなくすことになるよ。」(薬指の標本 by 小川洋子) “But I’ll give you one warning; I think it’s a bad idea to keep your feet in those shoes all the time just because they feel comfortable.” ” Why is that?” “Because they fit your feet too well. Just looking at them makes me scared. There is no …