Cumulus Day 176

「昔、中国に哲学者がいた。その哲学者が、ある日、弟子をつれて散歩にでた。河岸へくると、魚が泳いでいるのが見えた。それを見て、哲学者は、魚が楽しんでいるといった。弟子は、あなたは魚ではないのにどうして魚が楽しんでいるとわかるのですと、たずねた。すると哲学者は、おまえはおれではない。それならば、おれが魚の楽しみをわかってはいないと、どうしておまえにわかるのだといった。すると弟子は、私はあなたではないのだからもちろんあなたのことはわからない。あなたはもちろん魚ではないのだから、あなたに魚の楽しみはわからない。これはたしかだ、といった。この哲学者は誰だ。弟子は誰だ?」 よかった。それぐらいならわかる。 (貝塚をつくる by 開高健) “Once upon a time in China, there was a philosopher. This philosopher went out for a walk with his apprentice. When they reached a river bank, they saw some fish swimming. Seeing the fish, the philosopher said, the fish are enjoying themselves. The apprentice asked, how do you know the fish …

Nimbus Day 179

「砲声や銃声がひびきわたることもしじゅうだたがテラスにいっぱいの客たちはカニかハトか議論かにふけるばかりで誰一人として顔をあげるものもなかった。」 (飽満の種子 by 開高健) “Bombs and gunfire frequently roared in that area but on that terrace filled with customers, everyone was preoccupied with crabs or pigeons or debates and nobody even looked up.” (Seeds of satiety by Kaikou Takashi)